犬と私の10の約束 本木克英監督インタビュー

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犬と私の10の約束 本木克英監督インタビュー

本木克英監督

監督:本木克英氏
1963年、富山県生まれ。87 年松竹入社。森崎東、木下恵介、勅使河原宏などの監督に師事。『てなもんや商社』(98)で監督デビュー、第18回藤本賞新人賞を受賞。以後『釣りバカ日誌イレブン』(00)、『釣りバカ日誌12 史上最大の有給休暇』(01)、『釣りバカ日誌13 ハマちゃん危機一髪!』(02)、『ドラッグストア・ガール』(04)、『ゲゲゲの鬼太郎』(07)など。TVドラマ作品には「天切り松 闇がたり」(04)、「丹下左膳」(04)、10時間ドラマ「天下騒乱 徳川三代の陰謀」(06)、「めぞん一刻」(07)などがある。

shino(以下S):今回、「犬の十戒」をテーマに『犬と私の10の約束』を撮ろうと思った経緯は?
本木監督(以下監督):当初は「動物もの」は正直あまりやりたくなかったんですよ。
S:抵抗があったんですか?
監督:ありましたね。むしろ抵抗の方が大きかったかもしれません。ただ撮るだけでも可愛い動物を使って、さらに「感動作」と謳われてしまうと、作り手としては禁じ手みたいな。人を笑わせることは泣かせることよりはるかに難しい。だからあえてライトコメディタッチに描こうと思った。ただ、話を聞いたら「犬の十戒」というのが海外でも浸透して、話題になっている。「企画としてはありだな」と思ったので、単なる「ペット」としてではなく、「人間ドラマの中に犬がいる」という描き方ならいけると思ったんです。
S:キャスティングされる際、犬好きの方という条件でと伺いましたが
監督:芝居がどうしても犬主体になってしまうんですよ。時には30〜40テイク撮ることもある。そうすると俳優さんによっては不満を持つ場合もあります。だから、今回は気が長くて動物好きの俳優さんだけを集めました。
S:『犬と私の10の約束』での演技は全てリアルなんですか?
監督:合成カットは1カットもありません。(俳優さんと犬の)グループショットが上手くいくまで撮りました。1発OKの場合もあれば、1カット3時間もかかることもありました。ただ、時によっては奇跡的な行動をすることがあるんです。たとえば田中麗奈さんと加瀬亮さんが抱き合うシーンがあるんですが、そこでソックスがカメラの方を向いて座ってあくびをしたんですよ。「やってらんねーや」みたいな感じで(笑)。
S:成長過程に違和感を感じてしまう作品もありますが、今回はそれが全くありませんでした。
監督:オーディションで風貌の似ている子役を選んだというのもあるんですが福田麻由子は天才子役と言われて実力もある。個性的な女優さん。年の割に結構「おませさん」で、お母さんがいなくなったら料理もしたり、おしゃまな一面もあって魅力的。(進の)コンサート会場での回想シーンが橋渡しとなってすんなりと違和感なくつなぐことができました。
S:お父さん役の豊川悦司さんがいい味を出していらっしゃいますが、なぜ、一般的に渋いイメージのある豊川さんをお父さん役に起用されたのですか?
監督:若手二枚目俳優から家庭の味わいが出てきていいなぁと。観る人が自分を投影できるように創る。犬が好きな人は犬を見るし、中高年以上の方は豊川さんに自分の姿を重ね合わせるように撮る。人間っていうのは、成功した人はあまり見たくない。
S:布施明さんもいい味を出していらっしゃいましたよね。オペラ調で唄うシーンがすごく笑えたんですが、あれは監督のご指示があったんですか?
監督:ありましたね。ただ、本人は「あまり高らかに唄うと役柄ではなく布施明さんになってしまう」ということで随分抵抗したんですが、お客さんが観たいものを作るということで説得して唄ってもらいました。
S:監督としては観客にクスッと笑ってもらうという狙いがあったんですか?
監督:そうですね。常に「遊び」を考えているので、自分の性格もあると思うんですが。
S:『犬と私の10の約束』で好きなシーンをひとつ挙げるとしたら?
監督:コンサートの回想シーンですかね?あかりの嫁入り前日のシーンも田中さんも自然と力が入って良かったですね。雨の中、ソックスがさまようシーンなんかもスタッフ100名近くで大がかりに撮影しました。ひとつと言いながら、たくさん挙げてしまいましたが(笑)。
S:本木監督の映画の特徴は?
監督:遊び心ですね。シリアスなシーンって照れるんですよ。だから適度に落としてコミカルにしてしまう。
S:今後作りたい作品
監督:ジャンルは問わずドラマのしっかりしたものがいいですね。たとえばこの作品の場合、愛する人を失ったあと、どう生きるかが1番のドラマだと思う。
S:監督という職業について
監督:最初の観客であり、見たいものを目の前で見られる。1番やりがいのある職業ですね。10年くらいかかりましたけど。
S :最後にこの作品を観に来られる方にメッセージを
監督:いつも周りにいる空気のような存在に目を向けて、ともに暮らしているという優しさで接して欲しいと思います。
S :そうですね。そのメッセージは強く感じました。
監督:ソックスのお芝居も見ものです。是非見に来てください。
 
犬と私の10の約束』スペシャルインタビュー
ゲスト: 本木克英氏
インタビュアー: Shino